「印刷工場みやもと鹿沼工場」のFacebookで掲載していた「印刷ができるまで」をまとめたページです。印刷についてや印刷に関わる機械のことなど、わかりやすく解説しています。
網点とベタ/刷版室/版胴とブラン胴/平版オフセット印刷理論/ドライヤー
クーリング/排紙部/排紙部の折機部/シーター/コントロールボックス
その⑥「インキ」
紙はインフィードを抜けると4色のインキで印刷されていきます。1枚目の写真は上胴(裏面印刷)に使用するインキを入れる「インキツボ」、2枚目は下胴のイエローのインキツボです。インキツボに別室にあるインキドラムからパイピングという装置を使い各インキツボにインキを供給します。
この一般的なカラー印刷に使用する4色を総称して”CMYK”と言ったりしますが、実際はK(黒)→C(シアン・明るめの青)→M(マゼンタ・紫がかった赤)→Y(イエロー)の順で印刷していきます。これはインキの粘着性が強い順に並んでいて、インキが乾かない内に次のインキをのせる際、この「粘着性が強い順」が最も綺麗に印刷できるというわけです。
とここまで聞いて「?」と思った人もいるかもしれません。Kだけ日本語?このKはKuroやblacKではなく”Key plate”の略です。理論上は減法混色を基とした色の三原色であるCMYの掛け合わせで黒も再現できるはずなのですが、実際に印刷してみるとどうもパンチのある黒が出ないという経験から、画像の輪郭などを表現するために用いられた印刷板(これがKey plate)に黒のインキを別途使用した、というのが由来であります。
〈2016,6,28 投稿記事〉
その⑦「インキ室」
鹿沼オフ輪工場の隅にあるインキ室です。
ここには1本200㎏(!)のインキドラムたちが所狭しと並べられています。ここでパイピングシステムにセットされたインキドラムから各インキツボにインキが供給されていきます。
ドラムのラベルには下の写真のようなマークが印刷されています。エコマークの下にあるのは”VEGETABLE OIL INK”マーク。原料に大豆などの植物由来の油を使用した環境に優し~いインキです。
時にCMYKのプロセスカラー印刷が困難な色指定(特に単色印刷時)があります。そんな時に活躍するのが特色インキ(写真4枚目)です。ちなみに「金赤」とは特色インキの中でもメジャーなインキで、マゼンタとイエローを1:1前後の割合で混ぜたもので赤と朱色の中間あたりの色です。
在庫の特色インキにもない色指定の場合にはオペレーターがインキを混ぜ合わせて色を作ることもあります。そんな時に使用することがあるのが右にある「メジューム」。これはインキと混ぜることでそのインキの色合いを薄めることができます。シアンに混ぜると水色に、マゼンタに混ぜるとピンクになります。
〈2016,7,6 投稿記事〉
ラベルの写真
特殊インキ
その⑧「ローラー」
印刷ユニット内にはたくさ~んのローラーがあります。
上胴に17本、下胴に18本のローラーが着いています。金属製のものとゴム製のものがあり、それぞれに役割があります。大きく分けると、「インキツボから適量のインキをローラー群に移す」「インキを練りこむ」「インキを平版に着ける」「水舟から水を版に移す」の4つ。色んなところから撮影したローラー、ご覧いただければと思います。
なお、印刷時にはこれらのローラーは当然高速回転しています。手を入れたりすると危ないのでしっかりカバーをしてあります。
(印刷中にカバーを開けると機械が自動で停止する仕組みになっています)
〈2016,7,13 投稿記事〉
その⑨「水」
その⑧でも話しましたが、ローラーの中には水を平版に移すものがあります。
以前、私の友人に印刷機の話をしたところ、「水使うの!?」と驚かれたことがあります。平版印刷は水と油の反発する性質を利用した印刷方法で、水がなければ印刷できません。
平版にインキと水の両方を供給することで必要な箇所にインキをのせ、必要な箇所以外にインキがのらないようにします。印刷に使用する水のことを「湿し水」といい、ユニット裏にある湿し水用のタンクで適温(鹿沼工場では10~12℃)に保ちつつ、各「水舟」へと供給されていきます。水舟からローラーで湿し水を適量移していき最後平版にうっっすら均一の水膜を張るように湿らせる、という構造になっています。
ちなみにこの湿し水、特殊な液体を混ぜ合わせて印刷向けにカスタマイズされています。pH5前後の酸性。飲んだことはないですが多分飲まないほうがいいです。
〈2016,7,20 投稿記事〉
その⑩「平版(へいはん)」
平版というと少々こそばゆいです。普段は「版」とだけ言っているので。印刷で「版」というと版画のように色のつく部分とつかない部分で凹凸があるのが普通ですが、これは凹凸はありません。だから「平版」。
写真は黒・シアンそれぞれの平版です。材質はアルミです。見てもらうとと緑色の部分と白の部分があります。緑色が「画線部」と呼ばれる部分で、白が「非画線部」。親油性処理を施した画線部にインキがのり、親水性処理を施した非画線部には湿し水がのることによりインキがのらないようになります。その⑨で「平版印刷は水と油の反発する性質を利用した印刷方法」と書きましたが、平版の画線部と非画線部によりそれが分けられる、というお話でした。
〈2016,8,23 投稿記事〉
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